かつては商店街として賑わった通りに建つ事務所併用住宅です。北側高度地区斜線による限られたボリュームかつ吹抜けを作る余裕が無い中で、空間としての拡がりを如何に確保するかが課題となりました。全体をスキップフロアとしつつ、2階の床を36㎜のCLTのみで42㎝毎に段差を設けながら構成することで、空気的視線的一体感を確保するスリットを設けました。

建物全体を断熱等級6同等の性能で囲い、床スリットによって内部は空気的に大きなワンルームとなり、空気の抵抗が少ない自然換気をもたらします。屋上テラスへの出入り口部分は、中間期には重力差換気による自然通風を誘引するとともに、冬には上部に溜まった暖気を回収し最下層で吹き出します。夏には最下層に溜まった冷気を上層に戻し、空調空気の循環を図ります。1階部分は道路側の大きな木製建具によって街に開かれた事務所とし、通りの賑わい復活に寄与します。 

 

 名称   井の頭の家

 所在地  東京都三鷹市

 主用途  戸建住宅

 竣工   2024年11月

 床面積    79.77㎡

 構造   木造

 階数   地下1階、地上2階建て


極薄の床を家具的なスケールの段差でずらして全体を構成し、限られた面積と容積の中で空間の拡がりと視線・光・風の抜けを確保

 

街に開いた1階の土間アトリエ

小学生の放課後立ち寄り場や休日の小商い等にも活用 

 

1階書斎1からの見返しと吊り構造による階段

同じ厚み36㎜のCLT盤によって構成される床・階段・棚


2階小上がりスペースからの見返し

十分な採光と視線の抜けを確保するハイサイドライト

 

2階キッチンスペースからの見返し

カウンターがベンチや床へ連続する家具的スケールによる構成


一連のアスファルトシングル仕上げとした屋根と外壁

道路側は耐候性塗装を施した天然木集成材張り